名古屋地方裁判所 昭和40年(ワ)1527号 判決
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〔判決理由〕しかし<証拠>を総合すれば本件事故の状況につき、次のとおり認められる。
(一) 本件事故現場は一宮市松降通六丁目三九番地先の市街地を南北に通ずる幅員一九メートルの道路に東西を結ぶ幅員八メートルの道路がほぼ直角に交差する信号機の設備のない交通整理の行なわれていない交差点内路上である。右南北道路は歩車道の区別があり、(車道幅員は一一メートル、その両脇に各四メートルの歩道が設置されている。)中央にセンターラインの標示がなされた舗装平担、乾燥した直線道路である。
(二) 訴外福沢清志は昭和三九年五月二三日午後九時頃第二種原動機付自転車(飯田市三―四七・四五)(以下A車という)を運転し、その後部荷台に友人の水野史郎を同乗させて前記南北道路を時速約四五キロメートルで北進していた。A車の前方には小型貨物自動車(以下B車という)が同一方向に先行し、福沢はこれに追従走行していたが、B車は本件交差点に近づくに従い、右折の方向指示灯を出して徐々にスピードをゆるめた。福沢は右方向指示灯に気づかず同一速度で走行したため、本件交差点の約二〇メートル南方付近においてはB車の後方約二メートルにまで接近するにいたつた。そして本件事故現場付近において、更にB車が右折すべくブレーキをかけ、あやうくA車においてこれに追突しそうになつたため、交差点の中心点より数メートル手前で急拠福沢はハンドルを右に切り、そのままセンターラインを越えて対向車線に進入したことから、折柄南進して来た被告林栄一運転の大型貨物自動車(愛一な三四七七)(O車)の右側面に衝突し、その衝撃で後部荷台の水野をC車の前輪と後輪の間に投げ出し、本件事故となつた。
他方、被告林栄一はC車を運転し前記南北路を時速約四五キロメートルで南進し、本件交差点にさしかかつた際前方に右折の方向指示灯を出して対向してくるE車を認め、確かにブレーキを踏んだが、B車がスピードをゆるめたため、先に通過しうると考え、ほぼ前記速度で交差点に進入し、同交差点の南側付近でB車とすれちがつた直後、A車の右側後部に異音を聞き停車の措置をとつた。以上の事実が認められる。
(三) 右に認定した事実によれば、本件事故は専ら福沢の過失により惹起されたものと認められる。すなわち福沢は前方注視を怠り、先行車であるB車との車間距離を十分保たず、わずか二メートル後を追従した過失により、B車との追突の危険を生ぜしめ、これを免れるため安全確認のいとまもなく急拠右にハンドルを切り、センターラインを越えて対向車線に進入した過失により本件事故を発生させるにいたつたものと認められる。
被告林についても前方注視が不十分であつたやにも見受けられるが、右の如くA車がB車の後方にきわめて接近していたこと、B車が四輪車であるのに対しA車が原動機付自転車であること、相互に直線道路を走行接近し合う場合であつたこと等からすれば被告林においてB車の後方にA車が追従しているのを発見するのは極めて困難であつたというほかない。
更に原告主張の如く仮に被告林において、右折車の後方には一般に追従車輛があることを予見すべきであつたとしても右追従車輛が先行車同様交差点の中心の直近の内側を徐行するものと信頼するのが当然であり(道路交通法三四条二項)本件のA車の如く交差点の中心の数メートル手前をいきなり相当の速度で右折することを予見すべき義務はないものといわねばならない。したがつて被告林については本件事故につき過失があるものとは認め難い。
二、以上のとおりであるから本件事故につき被告林について不法行為上の責任を問うことはできず、被告高山についても同被告がO車の運行供用者であることは当事者間に争いがないが、本件事故が福沢によるものであつて、同被告および被告林の過失によるものでないことは前記のとおりであり、C車に構造上の欠陥および機能上の障害がなかつたことは弁論の全趣旨によりこれをうかがうに十分であるから、被告らの免責の抗弁は理由があるというべく、被告高山も免責されているといわねばならない。
(西川力一 藤井俊彦 柄多貞介)